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陰毛と無毛のあいだ「芋虫」

芋虫 乱歩のアレを丸尾末広がマンガにしたやつ。濃く、エロく、成人限定。

 トシとったなぁと実感するシーンは日常に多々あるが、非日常では「白板に反応しなくなった」、これに尽きる。無毛にはぁはぁしてたのは遠い日のこと、今では茂えてないと、萌えないし燃えない。密生した箇所に、強い欲情を感じる年頃なのだ。これは、オトナになったというよりもむしろ、オヤジになったんだなぁとつくづく思う。

 マンガ化された「芋虫」で、もっとも気に入ったのは、語り手でもある妻のジャングルのようなそれ。鬱屈した情欲が、下半身に燃え上がっているように映える。さしずめ、黒い炎というべきだろう。濃い陰毛は、口でどれほど否定しても、淫蕩の証拠なのだと解釈する。いっぽう夫はすべすべとした肉塊のようで対照的なつくりとなっている。

 傷痍軍人である夫との生活感が変にリアルで、あのうだるような夏のムシ暑さがフレームを通して伝わってくる。夫は戦争で両手両足、聴覚、味覚といった五感のほとんどを失い、タイトルが示す「芋虫」のような姿となっている。醜悪な姿となった夫をいたぶることで、彼女のS心が高ぶる様は、美しく、おぞましい。原作を初めて読んだとき、醜いのはどっち、"芋虫"なのはどっちよ、とつぶやいたものだ。

 マンガ版を読んで改めて思ったところが二点。ひとつめは、夫の珍宝。砲弾とともに吹き飛ばされた……と勝手に思っていたのだが、マンガではご存命。原作を読んだとき、交合できない(けれども夫の欲望処理には応じなければならない)妻の渇きのような抑圧された心象を感じたが、記憶違いか。マンガでは旺盛かつ妖艶な合歓の姿態をみせつける。まさに「セックスは夫婦を救う」やね。「結婚は人生の墓場だ」という諦観モードの人には、「夜は墓場で運動会!」と返歌しよう。

 もうひとつは、変態プレイを求めたのが、"夫側"であること。バナナをバ○ナに差し込んでモグモグしたのをもぐもぐするなんて破廉恥な!青少年保護条例にかかりますよといいたいところだが、原作の変態主導権は、むしろ妻側にあったような。交接できない欲求不満を、ありえないプレイで満たそうとしたのは妻だったはず。もちろん夫も求めて「は」いたのだが、「これなんでしょ、これが好きなんでしょ」と応じていくうちにノリノリになって、そんな自分をぢっと見つめる純な眼にむらっときて……あの悲劇に至る、そんな話だと記憶している。

 いずれにせよ、頭の底にあった「読んではいけない本」の記憶が掻き乱されてイイ感じにしてくれる。じめっと暗くドロドロした汚猥な感じが、剥き出しでエログロな愛欲に取って代わられており、これはこれで浸れる。

 淫靡で耽美で猟奇な世界を、ご賞味あれ。

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