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【どくいり】骨餓身峠死人葛【きけん】

骨餓身峠死人葛(このエントリにはエログロな描写がありますよ。それから、下品ですよ)

 久しぶりに猛毒にあたった!「これはひどい」と「これはすごい」の両方の賛辞を贈る。それから、この短編のせいで女陰を直視できなくなった。この強迫観念は、既視感覚を伴いながらトラウマ化しつつある。おそろしい、おそろしい。

 お題は「ほねがみとうげほとけかずら」と読む。屍体に寄生して養分を吸い取る葛(かずら)の話だ。わずか30分で読めてしまう短い小説にもかかわらず、これは、一生涯忘れることができない。忘れたい、記憶から消し去りたい ―― めずらしく読んだことを激しく後悔する毒書になった。

 なまぐさい臭いが漂ってくる。文体と描写と(脳にうかぶ)ビジュアル映像が濃密に絡み合っていて、呼吸を忘れて読みふける。血しぶくシーンや、兄妹の近親相姦だけがなまぐさいのではない。男を求めて濡れて白くひかっている女陰の臭いがハッキリと嗅ぎ取れるんだ。そして、黒々とした茂みの中に鼻を近づけると、びっしりと詰まって蠢いている蛆虫が見えてくる寸法だ。

 一生忘れられないところはココ↓

── 女の気ちがいは、色に狂っていて、年中裸同様の姿でうろつきまわり、ところかまわず大の字に寝て、いかにも男さそう如く、腰浮かせてみせ、相手にされぬまま寝こみ、山蟻がよく、その秘所にむけていそがしく行きかい、「どげんしたとね、ほれ、ぼんぼばありにあらされとるがね」老人の一人、親切心に注意すると、女はくるりと裾まくってさらにあらわにし、秘所うごめいてみえるから、思わずたしかめると、びっしり蛆がつまっているので、たしかにそのピチピチとはねるような鳴声をきいたという。

 カマキリやアンコウの雄の例をあげるまでもなく、男はセックスの度に喰われている。あくまで擬似なんだが、ぬらぬらひかっているのを見るとあながち比喩でもないなぁ、としみじみ思うし、それこそ快楽に下半身が無くなったような感覚は喰われてしまったからなのかもしれぬ。

 そういう、女陰の本質的な恐ろしさが、原体験のように刻み込まれた。女が読むと異なった読後感が得られるだろうが、そもそもこんな小説は読んじゃいけないと強く忠告しておく。

 劇薬小説ランキングに変動あり。

  1.児童性愛者(ヤコブ・ビリング)
  2.隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
  3.骨餓身峠死人葛(野坂昭如)
  4.獣舎のスキャット(皆川博子)
  5.暗い森の少女(ジョン・ソール)
  6.ぼくはお城の王様だ(スーザン・ヒル)
  7.砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)
  8.蝿の王(ウィリアム・ゴールディング)

 読むなら心して。

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No title

今頃読みましたが野坂昭如、面白いですね
独特の文体が、落語か講談の長台詞のようだし
文中で時制が変わったり。
続けて「死屍河原水子草」読んでます、こっちは多少エロ寄りですが
これもいいです

Re: No title

>>kartis56 さん

コメントありがとうございます、亀レスごめんなさい。
『死屍河原水子草』は手に取ってみます(間違いなく劇薬ですね)。

No title

つづけて「アメリカひじき・ほたるの墓」読みましたが
こっちはフィクションっぽさが薄くてちょっとノリが弱いですね
そして映画とは感触がだいぶ違う…
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スゴ本より成人向のキッツいのを。
いいのがあったらご教授を。

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