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最悪の読後感を味わわせてくれる小説

現在のワースト3は以下のとおり。

料理の科学1ぼくはお城の王様だ砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

 ・隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
 ・ぼくはお城の王様だ(スーザン・ヒル)[参考]
 ・砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)

 「最悪の読後感」とは文字通り、サイアクの気分にさせてくれるという意味。読了後、目の前が真っ暗になって、読んだことを後悔してしまいたくなるような、そんな小説。

 小説自体がひどい出来でウンザリさせられた、というのはこれにあたらない。なぜなら、くだらないと見やいなや即破棄するから。また、描写がアレなやつを求めているわけでもない。「読むスプラッター」として一世風靡したクライブ・バーカー「血の本」シリーズは楽しく読んだ。精神的に逝っちゃってる「ドグラ・マグラ」はおっかなびっくり読んだが、読後感は「面白い私小説!」だった。

 人より耐性はあると自負しているわたしが跪いたのは上の3冊。挙げてみて気付いたが、いずれもテーマは虐待。この話にダメージを受けるのは、親をやるようになったからだろう。ただし、これが小説ではなくノンフィクションになると話は別。以前、女子高生コンクリート詰殺人事件に関連した書籍を漁ったことがある[参考]が、気が滅入る一方で、どこか(親として)エリを正すような気持ちにさせられた。

 ワースト3のサイアクっぷりは以下のとおり(【注意!】激しくネタバレだけなでなく、ショッキングなことも書いてあるので、承知したうえで反転表示してねッ)

 「隣の家の少女」は、虐待されるガールフレンドを助けられなかった男の子の話。両親を交通事故で亡くした姉妹を引き取った女が折檻する。そのエスカレートっぷりはわたしの限界を超えている。女は姉妹を地下室に監禁し、強がる姉を剥く。そして、自分の息子に「おまえ童貞だろ、ファックしてやりな」とけしかける。さらには××××ワードを糸で腹に縫い付ける場面はじゅうぶん嘔吐に値する。

 救われないのは、主人公が少年(子どもでないが、無力)というところ。姉のほうに淡い恋心を抱き、なんとかしようと足掻くのだが、しょせん子ども。己の無力さを思い知る。ラスト1ページで意趣返しはかなうのだが、そんなことをしても何も救われない。

 「ぼくはお城の王様だ」は、「強い立場」の子どもが「弱い立場」の子どもをイジメる話。読みどころは、誰もおかしくないこと。イジメられている子の母や、イジメっ子の父が偽善的に描かれていればまだ救いはある。しかし、誰かを悪者のように描いていない。ただ、ほんの少しだけ子どもから目を離していただけ(だと思いたい)。イジメっ子自身も悪者のように描いていない。イジメ慣れしていない子がイジメに走ると、陰惨なやつになる典型。

 誰も悪くないなどとは言わないが、誰かのせいにして読者に納得させること許さない。最終的に自殺にまで追い込まれる理由は、憎しみだ。イジメっ子が憎い、分かってくれない母も憎い、だが最もやりきれないのは、どこにも持って行き場のない憎悪を抱いてしまった自分自身。そのあまりの禍々しさにおののくシーンがある。誰にも打ち明けることもできず、独りで立ち向かうこともできず、ただ泣くしかない。普通の小説なら、誰かが流れを変えるきっかけをくれるのだが、ない。知らずに期待して読むと酷い目に遭う。

 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」は、友達がバラバラにされて積まれているのを、女の子が見つけるまでの話。ラストでどうなるかは最初のページに書いてある。理不尽なセカイに無力なワタシ。オトナになるためには、子どもを生きのびなければならない。

 着地点が分かっていて、そこへの過程を綿密にたどるかと思いきや、そうではない。なぜそんなことになってしまったのかは説明されていない。「百合小説の傑作」という誰かの誉め言葉と表紙の萌え絵に吸い寄せられたのが運の尽き。予備知識ゼロで読んだ人は酷いショックを受けるかもしれない(例えば「君が望む永遠」を予備知識ゼロでプレイするとか)。


 ああ、そういえばわたしもそうだった無力で壊れやすい子どもだった。しかし、残虐なイジメに出くわすこともなく、己の憎悪に打ちひしがれることもなく、狂った親に殺されることもなかった。

 もちろん事実の方が「奇なり」なのだから、小説から得られる「サイアク感」なんてたかが知れているのかもしれない。新聞とテレビだけで気が滅入ることばかり(編集でエログロ風味は消されてるにもかかわらず!)。

 それでも巷に溢れる「感動的な」「泣ける」「爽やかな」物語なんていらん。感動を期待して読むのは精神的マスターベーション。読んだことを後悔するような劇薬小説を求めて、訊ねてみよう。

「最悪の読後感を味わわせてくれる小説を教えてください」

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